静かなる昼を、静かに栞を抽いて、箔に重き一巻を、女は膝の上に読む。
「墓の前に跪ずいて云う。この手にて――この手にて君を埋め参らせしを、今はこの手も自由ならず。捕われて遠き国に、行くほどもあらねば、この手にて君が墓を掃い、この手にて香を焚くべき折々の、長しえに尽きたりと思いたまえ。生ける時は、莫耶も我らを割き難きに、死こそ無惨なれ。羅馬の君は埃及に葬むられ、埃及なるわれは、君が羅馬に埋められんとす。君が羅馬は――わが思うほどの恩を、憂きわれに拒める、君が羅馬は、つれなき君が羅馬なり。されど、情だにあらば、羅馬の神は、よも生きながらの辱に、市に引かるるわれを、雲の上よりよそに見たまわざるべし。君が仇なる人の勝利を飾るわれを。埃及の神に見離されたるわれを。君が片身と残したまえるわが命こそ仇なれ。情ある羅馬の神に祈る。――われを隠したまえ。恥見えぬ墓の底に、君とわれを永劫に隠したまえ。」
静かなる昼を、静かに栞を抽いて、箔に重き一巻を、女は膝の上に読む。
「墓の前に跪ずいて云う。この手にて――この手にて君を埋め参らせしを、今はこの手も自由ならず。捕われて遠き国に、行くほどもあらねば、この手にて君が墓を掃い、この手にて香を焚くべき折々の、長しえに尽きたりと思いたまえ。生ける時は、莫耶も我らを割き難きに、死こそ無惨なれ。羅馬の君は埃及に葬むられ、埃及なるわれは、君が羅馬に埋められんとす。君が羅馬は――わが思うほどの恩を、憂きわれに拒める、君が羅馬は、つれなき君が羅馬なり。されど、情だにあらば、羅馬の神は、よも生きながらの辱に、市に引かるるわれを、雲の上よりよそに見たまわざるべし。君が仇なる人の勝利を飾るわれを。埃及の神に見離されたるわれを。君が片身と残したまえるわが命こそ仇なれ。情ある羅馬の神に祈る。――われを隠したまえ。恥見えぬ墓の底に、君とわれを永劫に隠したまえ。」